土曜の夜。今日もオケの練習で遅くなってしまった。あいにく夕食はまだ取っていない。
最寄り駅に着いて、アナログなのに狂いの無いホームの時計を見るとPM10。
普段は料理をするが、料理をするぐらいなら早く寝たい。
日常的には利用しないが値引きお惣菜を狩りに、
夜のスーパーへ繰り出す。
10時以降の夜のスーパーは良い。
客が少なくて、何より店員が穏やかだ。
閉店に向けたクロージング作業はあるのだろうが焦りを感じない。
夜のシフトは精鋭揃いなのだ。ほぼ社員しかいなく、変に急ぎすぎずかつ着実にレジ打ちをこなす。
客層も大量買いをする主婦はおらず、ほとんど一人暮らしの民だ。
一人当たりの購入量も少なく、レジの回転も速い。
何もかもがゆっくりと流れている。
店員も客も分かっているのだ。小川が上流から下流に流れるように、淀みない人とモノの流れを。そこに感情はない。
しかし夜のスーパーに入ったときに、いつもの都会の喧騒から一線を画すようなあの清らかな流れが、今は石油のように重く何かを引きずるように流れている。
私はお総菜コーナーへ直行する。そしてすべてを悟った。
お惣菜が無い。
~つづく~